皮膚病とは皮膚だけの問題ととらえがちですが、日々、皮膚科と皮膚科以外の診察を行っていると、「皮膚炎(かゆみ)が原因で起きてしまっていると考えられる、皮膚以外の問題」というものが見られることがあります。
その一つが「関節や神経の痛み」です。
痒みにより身体を掻く際、痒みの場所によっては非常に不自然な体勢で掻いてしまうことがあります。
例えば犬は頭の付近、耳など掻く際、多くの場合後ろ肢で掻こうとします。そうすると後ろ肢を耳に持っていくために腰が「くの字」に曲がります。首もうしろに向けようとします。それを繰り返し行っているうちに、関節痛や神経痛を引き起こしてしまうのです。
上のレントゲン写真は4歳の犬アトピー性皮膚炎の子のレントゲン写真ですが、腰骨が大きく変形しています(変形性脊椎症)。
犬の4歳は、人でいうところの30代半ばぐらいですので、普通に生活していればこのような変化はまず起こらず、慢性的な身体を掻くという行為に伴って起こっているものと推測されます。現在、痛みは生じていないものの、将来的には痛みを起こす可能性があり、積極的な痒みのコントロールが必要な状態です。
それ以外にも、痒みがあると神経質になり、怒りっぽくなることがあります。痒みの治療をしてあげることで性格が穏やかになる子もいます。眼の周りがかゆくて、眼球を傷つけてしまうこともあります。
皮膚病は完治するものもありますが、付き合っていかなければならないケースも多いです。痒みをゼロにすることも、病態によっては難しいかもしれません。ですが、痒みを抑えてあげることが、動物たちのQOL(生活の質)の向上、またご家族のQOLの向上、そして身体を掻くことが原因で起こる合併症の予防につながりますので、かゆみでお困りの子がいましたら、是非一度、ご来院頂きますようお願い致します。(下の写真は、当院でご用意している保湿系シャンプーの一覧です。保湿が皮膚のバリア機能を高め、細菌やアレルゲンの侵入を防いでくれます。)