皮膚病と間違えやすい疾患①肥満細胞腫
11歳のチワワの男の子です。左脇腹に虫刺されのような跡があり、痒がっているとのことです。
飼主さんは自宅で塗り薬を塗布されていましたが、一向に良くならないため、病院に受診されました。
写真のように皮膚が少し盛り上がっており、一見、飼主さんが仰るように、虫刺されの跡のようにもみえます。
しかし、この部位の細胞検査(針生検)を実施してみると…
写真のような、たくさんの顆粒を持った細胞が検出されました。
このできものは「肥満細胞腫」という悪性腫瘍でした。
肥満細胞腫は、ワンちゃんの皮膚に出来やすい悪性腫瘍の一つで、一見、腫瘍のようにみえない場合もあります。
また、この子のように痒みを伴うこともあるため、そのことがさらに皮膚病と間違われやすい点でもあります。
この腫瘍は、手術が治療の基本になりますので、腫瘍の周辺の毛刈りをしてみると…
この写真を見ても、やはり一見、悪性の腫瘍には見えませんよね…
ですが、放置しておくと、全身に転移するケースもありますので、手術を行いました。
写真は術後、1週間目の様子です。
「あんなに小さなしこりなのに、傷はこんなに大きいの!?」と
驚かれるのも無理はありませんが、肥満細胞腫は、しこりの周辺にも腫瘍細胞が広がっていることがあるため、余裕を持って切り取る必要があります。
今回のように、見た目では悪いものに見えなくても、重大な病気が隠されていることがあります。
また、この病気は比較的若い子にも多い病気の一つです。
おうちのペットのことで少しでも気になる点があるようでしたら、見た目だけで判断するのではなく、動物病院できちんと診てもらうことをおすすめします。
(飼主様の許可を得て、掲載しています)